新年あけましておめでとうございます。今年も宜しく願います。
今日は、今年の干支「ウサギ」について、2点お話ししたいと思います。
「干支」とは本来、古代中国の五行説からくる十干と十二支の組み合わせのことで、本年2011年は正式には「辛卯(シンボウ)、辛卯(かのとう)」の年になりますが、最近は干支というと一般に十二支をいうようですので、ウサギについてお話しします。(因みに本年平成23年は、昭和が続くと86年、大正元年からはちょうど100年の年に当たります。)
さて第一に、「ウサギ」というと私が思い浮かべるのは、南木佳士の「ウサギ」という小説です。この小説は、小学生の頃、ランドセルにウサギを入れて悪戯した女の子との再会とその女性の死を描いたもので、「ウサギは寂しいと死んでしまう」ということばを手がかりに、生と死について考えさせる内容のものです。「ウサギ」はこの作品の少女同様、白く清潔で可憐なものの象徴で、清いものは弱く、感受性の鋭い動物(人間)は寂しさに耐えきれず死んでしまうものなのか、と切なく問いかけています。心が洗われるような、優しい気持ちになれる小説です。
南木佳士は群馬県の生まれですが、秋田大学医学部卒業の医師であり小説家です。1988年「ダイヤモンドダスト」で芥川賞を受賞しています。医師である故に「生と死」をテーマとし、軽妙な短編小説が多く、学生時代は秋田で過ごしており秋田での生活なども語られますので、皆さんにも親しんでもらえる作家かと思います。興味があったら、読んでみてください。
第二に、「うさぎ」に関する諺やイメージについてです。
「うさぎ」についての諺や童話はたくさんあります。(2〜3の例)
イソップ童話の「うさぎと亀」の競争の話や日本神話の「因幡の白うさぎ」などに描かれるうさぎは、油断して思わぬ結果を招いたり、ワニ鮫を騙して痛い目にあったりで、相手を小馬鹿にしたり騙したりで感心しませんが、どこか憎めないところもあります。
また「一日だけ動物になれるとしたら、何の動物になりたいですか」というバンダイという会社の子供アンケートでは、うさぎが1位で、特に女の子からは圧倒的に支持されています。(因みに2位はライオン、3位・4位は犬・猫でした。)ピョンピョン跳ねる姿や鼻をピクピクさせるのが可愛い、可愛いからなってみたいというのがその理由のようで、全国の小学校で飼われている動物もうさぎが一番多いそうです。「みんなに可愛がられている」「誰からも好かれる」というイメージが「うさぎ」にはあるようです。
加えて「兎の上り坂」という諺を紹介しましょう。私はスポーツやスポーツ観戦が大好きで、毎年正月は「箱根駅伝」をテレビ観戦していますが、今年も福島県出身で東洋大学の柏原竜二選手が5区の山登りで3年連続の区間記録を達成しました。そして彼の走りをあるラジオ番組で4代目江戸家猫八という物真似師が、「あれは兎の上り坂だねえ」と評していました。下半身の強いバネのある柏原選手の走りは、まさに兎同様登りを得意とする走りなのだというのです。皆さんご存じのように、兎は前足は短いのですが、後足は長く筋肉が発達しバネがあります。ですから下りは不得手ですが、上りという兎の体型にあった条件では抜群に速く走るわけです。それ故に、「兎の上り坂」という諺は、物事が良い条件でぐんぐん進むこと、得意とする事柄で能力を発揮することのたとえで使われます。
2011年の「うさぎ年」に当たり、皆さん一人ひとりにとって、本年が「兎の上り坂」のように物事が順調に進む年であること・得意とする分野で能力を発揮できる年になることを願い、また本校「角館南高等学校」が兎のように跳躍し飛躍する年になるよう祈念し、3学期の始業の挨拶と致します。